拾った総長様がなんか溺愛してくる(泣)【完】




「お前のことは、嫌いだ。けどイジメなんて幼稚なことする奴らの方が、もっと嫌いだ。ほんと馬鹿みたいだろ、一人に寄って集って…マジ馬鹿みてぇ」



反応することも忘れて、思わず彼の目を放心状態でじっと見つめてしまった。BARで初めて会った時から素直な子だと思っていたが、予想以上だ。


素直で、正義感の強い優しい人らしい。


嫌いな人間はとことん嫌い抜く真っ直ぐな態度が、誤解を生みやすいのだろう。心根は真面目なようだし、少し勘違いしていたかもしれない。



「だ、大丈夫。目に見えてイジメられてるわけじゃないから。大抵は獅貴たちが傍に居るし…あっ」



マズい、獅貴のことが好きな流川くんの前で無神経な発言だったか。


恐る恐る流川くんの表情を窺うが、そこまで怒っている様子は無い。多少不機嫌な色を浮かべてはいるが。


「…。…なら陰湿なことはされてるってことか。総長は気付いてるのか?」


「あ、いや、獅貴たちには何も言ってないから…」


あぁ?と額に青筋が立ちそうな勢いだった。私がへらへら笑いながら答えた言葉に、何故かご立腹のようだ。



「…なんで」



変わらずきょとんと首を傾げる私に、流川くんは一瞬困惑したように瞳を揺らす。すぐに表情を崩すと、下唇を苦しげに噛み締めた。



「お前、総長たちのレッテルが目当てなんじゃないのかよ、容姿とか、地位とか…。何でそこまで我慢出来るんだ」



あぁ…と納得する。彼はまだ誤解したままなのだ。



「…私はレッテルとか、そんなのどうでもいいの。獅貴が勝手に寄ってきただけ…っていうのも、今は違うかな…。ちゃんと獅貴たちのこと知って、今はちゃんと、友達だと思ってる」