お互い頬を染めた状況。そして「脱いで」という言葉。ここに第三者が居たら確実に誤解されるシチュエーションである。
流川くんは真っ赤な顔のまま手を横に振る。
「靴下だよ靴下!右足の足首だろ挫いたの、包帯巻くから早く脱げって言ってんだ」
「あ、あぁ、そういう…」
余りに動揺していた為にその言葉の違和感に一瞬気付けなかった。私を嫌っているはずの彼が、どうして私の心配をするのか。
靴下を脱ぐと直ぐ、流川くんが私の踵に手を添えて足首を凝視する。途端にその視線は険しくなって、何故だろうと見下ろすと、さっきまで赤く腫れていたそこは紫に変色していた。
「うわ、ちょっと大変」
「ちょっとじゃない重症だ。まさかとは思うが、お前ここまで一人で歩いて来たなんて言わないよな?」
一人だと答えると、険しい瞳は呆れたように細められる。
「こんな怪我で?よく一人で歩こうと思ったな」
「…友達いないから。
…クラスの子達に嫌われてるし」
原因は、まぁ言うまでもなく獅貴だ。いや、獅貴だけとは言えないのか。涼くんとか陽葵とか、倉崎くんとか未星くんとか、括って言ってしまえば、いつもの面々である。
あの五人はモテる。それはもうとても。だからこそ、獅貴にベッタリくっ付いて…どちらかと言うとくっ付いているのは獅貴の方だが、そんな私が邪魔なのだろう。
女の嫉妬は怖い。高校に入って思い知った。
「…何だお前、イジメられてるのか?」
グッと忌々しそうに拳を握り締める流川くん。心底怒っているような表情に疑問を抱いて首を傾げると、彼は心外だとばかりに顔を歪めた。

