思わず上げた大きな声で"彼"が目覚めたらしい。彼はむくりと起き上がって、私の方に視線を向け固まった。
「な、お、お前っ!!」
ピシッと指されムッとする。人のこと指差しちゃいけないって習わなかったのか。全く、こういうところ"も"よく似ている。
そう、この失礼な態度と傲慢そうな視線。まさに私の怪我の原因、今朝の出来事での獅貴に、良く似ているのだ。
「流川くん…」
獅貴に似ているから、ただそれだけの理由で彼の名前を覚えてしまっていた。未星くんや倉崎くんのことはほぼ忘れていたのに、これはどういう違いなのか。
流川律くん、今のところ獅貴のことが大好きな美形という情報しか無い。
「なんっ、何だ、何しに来た」
保健室に来てすることと言えば怪我の手当てくらいだと思うのだが、それ以外にもあるのだろうか。
「…足、挫いちゃって」
すぐに興味が失せて無視するかと思ったのに、私の言葉を聞いた途端流川くんの顔が固くなる。心做しか青ざめた顔に首を傾げると、眉間に皺を寄せた彼が軽く手招いてきた。
「…え、なに?」
「…いいから、来い」
仏頂面で手招く流川くんに数秒黙り込んでいたが、彼の背後が苛立ちで黒く染まる様子に慌てて足を進める。
座れ、と場所を譲られて大人しくベッドの縁に腰を下ろした。
「あの…?」
困惑する私をシカトして、流川くんは壁際の棚に置かれた包帯と小さな冷凍庫の中に入っていた保冷剤を取り出し戻って来る。
「脱いで」
「……はっ?」
突然のその言葉に目を丸くすると、怪訝そうに眉を顰めた彼が直後慌てたように頬を染めて弁解してきた。
「ちっ、ちが、変な意味じゃねぇよ!!」

