拾った総長様がなんか溺愛してくる(泣)【完】



「…っ!?」


そんなことを考えて慌てて首をブンブンと横に振る。有り得ない。それだけは有り得るはずがない。


ならこの気持ちは何だ。さっきから煩く鳴り響く鼓動の高鳴りは、熱く火照る頬は、一体何なのか。



「…冗談?何言ってるんだ」


「……、…え?」



きょとんと傾げる獅貴に、数秒遅れて間の抜けた声を返す。掴んだままだった獅貴の手首からはっとして手を離そうとすると、逆にその手を掴まれてしまった。


強い力は段々と弱まり、そっと握るだけになった手を引き寄せられる。私の手のひらに頬を擦り寄せた獅貴にビクッと体が揺れた。



声が出ない。時が止まったみたいに、私と獅貴を取り巻く空気だけが静かに落ち着いている。



「冗談なんかじゃない」



やがて口を開いた獅貴が、憂いを込めた瞳を僅かに伏せた。



「…本音だ。紫苑にだけは嘘をつかない」



獅貴が頬に当てていた私の手を、(おもむろ)に唇の辺りに移動させる。口付けと言うには余りに拙い、獅貴の唇の表面と私の手のひらがくっつくだけの淡い仕草。



鼓動の高鳴りが更に強まったのは、気の所為だ。そうだと、思いたい。



「弄ぶなんて、有り得ない。俺はいつだって本気だ。紫苑への言葉を軽々しく言ったことは無い」



真っ直ぐな視線が体を震わせる。どうしてだろうか、その言葉の真意を知りたいようで、けれど知りたくないとも思うのだ。


柔らかく細まった瞳は緊張を解かせる。



「…いつから」



主語のない問い。意味を読み取るのは難しいはずなのに、獅貴は全てを見透かしたような顔で微笑む。


私だって、自分で自分が何を聞いているのかよく分かっていないのに。