「泣いてる、のか…?」
その言葉で初めて、頬を伝う雫の感触に気付く。それは一筋だけのものだったが、獅貴の瞳に映る私の表情は酷く沈んでいた。
その自分の姿に驚いて、けれど何も言えない。どうしてこんなにも、苦しいのだろう。
「…泣いて、ない」
「嘘だ、泣いてる」
引き寄せられたかのように伸ばされた獅貴の腕が、私の方に一直線に向かってくる。涙の跡を下から上に指で辿って、瞼にまで到達した後、そこに溜まった雫を掬い取る。
あろうことか掬った雫を、獅貴は熱の籠った視線で見下ろし、舌で舐めとった。
「な、はっ、何して…!!」
反射的に獅貴の手首を掴む。もう涙は舐められてしまったので手遅れだが、そんなことを考える余裕も無く狼狽した。
獅貴の舌が乾いた唇をなぞる。その獰猛な色気に頭がクラリとして倒れそうになったが、寸前で堪えた。
「…泣くな、何が悲しい?
紫苑の涙は美味いが、紫苑が悲しむのは嫌だ」
歯の浮くようなセリフとはこのことだろう。そう思ってしまうほどキザったらしくて、甘い言葉。けれど表情は無い、全くの無表情だから違和感が凄まじい。
一応瞳に熱は籠っているから随分甘い目をしているのだが、他人がパッと見れば恐怖しか感じない。
「なにが、って…」
分かってるくせに、という言葉は飲み込む。どうして誤魔化すんだろう。まさか本当に分かっていないのか。
「弄んでる。さっきも言ったよ。流石に冗談でも、そういうこと軽々しく言われるのは傷付く、から…」
改めて言葉にするとかなり恥ずかしい。これじゃまるで、まるで…。
―――私が獅貴のこと、好きみたいじゃないか。

