「――傷だらけだったから、分からないか?」



傷、だらけ…?


その言葉にはっとして、獅貴の顔をまじまじと見つめる。

何故か顔を赤く染めた獅貴を不思議に思いながらも、やがてその予感は確信に変わる。


「あぁ!!この間の不良か!!」


「不良…」と複雑そうに顔を歪めた獅貴だが、今度は嬉しそうに笑いながら私の手を両手で握ってきた。

この仕草になんの意味が…恥ずかしいからやめて欲しいな…。



「覚えててくれたのか、あの時はありがとう。
紫苑が居なかったら死んでいた」


「そんな大袈裟な…」



大層な処置をした覚えはない。

それに獅貴こそ覚えていたなんて驚きだ。それに私に恩を感じていたことも。


てっきり不審者扱いされてると思っていたが、私の行動も報われるものだな。



「…傷、残らなかったみたいで本当に良かった」



思わず獅貴の頬を撫でながら呟くと、獅貴は気持ち良さそうに目を伏せる。


――…猫みたいだな…。