正直『養ってやる』には心動かされてしまうところだった。流石獅貴だ、私の弱みをよく理解している。
私のタイプは『高収入』で養ってくれる人。結婚するなら敏腕リーマンの方がいい。顔はぶっちゃけ二の次である。と言ってもイケメンに惚れるのは惚れる。イケメンだし。
その点を鑑みた上で、正に獅貴は理想の男性像と言えるだろう。どうやら獅貴は何処ぞの大企業の御曹司だとか、老舗旅館の跡取り息子だとか、校内外関わらずたくさんの噂が流れているそうな。
私としては獅貴が上流階級の人間だったとしても『まぁそうだろうな』としか思わないので何かが変わる訳でもない。
何せ所作は上品、傲慢な性格の中にある庶民では有り得ない金銭感覚。普通の男子高校生と思えという方が無理である。
「紫苑…俺なら一生養ってやれるぞ?」
これもう確定だろ。確定で上流階級だろ。
やたら不思議そうな顔で首を傾げる獅貴。私の一生を総額しても端金と言わんばかりである。
「毎日美味い飯食わせてやれるぞ?
ふわふわのオムライス食べれるんだぞ?」
やめっ…やめてくれ…!!
豆腐の如く揺れる心を鋼にするので一苦労だ。獅貴め…ふわふわのオムライスを掲げてくるのは卑怯だぞ…私がどれだけオムライス好きか知ってるくせに。
ぐぬぬ…と拳を握り締めながら誘惑に耐える。もやしで埋められた弁当に蓋をして、さっとその場から離れ鞄の傍にしゃがみ込んだ。
「………駄目か」
背後からボソッと聞こえた声は聞こえないふりをする。残念そうな声だ、本当に何がしたいんだこの男は。まさか本気でプロポーズしてるわけでもあるまいし。

