「……それは何だ?」
きょとんと問い掛けてくる紫苑。見ての通り…とは言えないが、普通にJKのお弁当である。
「それが…弁当…?」
何かおかしいかと問うと、途端に獅貴の顔が曇る。憐憫の篭もった眼差しが向けられたかと思うと、使命感を宿した瞳でガッと両肩を掴まれた。
その衝撃で思わず後退り、視界がチカチカと点滅する。
「紫苑、我慢する必要は無い。
お前がそんな量で満足できるわけないだろう?」
少し馬鹿にされたような感じがしたのは気の所為だろうか。何だよ『出来るわけないだろう?』って。喧嘩売ってんのか。
少なくとも年頃の女子高生に吐く言葉じゃない。自分が人より大食いだということは痛いほど分かっている。が、人に思い知らされるのは恥ずかしい。
「…う、うるさいな。
いいんだよ別に。ダイエットしてるの」
勿論ダイエットなんてしていない。寧ろ金欠でろくにご飯が食べられないのでダイエットする必要が無い。毎日がダイエットDayである。
分かりやすく顔を逸らした私に何を思ったのか、獅貴は視線を伏せてワナワナと震え始める。怒ってるのかと身構えたが、どうやらそうでは無いらしい。
バッ!!と顔を上げた獅貴が、決意を込めた爛々とした瞳で私を射抜いてくる。
「俺が養ってやる!!一緒に暮らそ―――」
「お断りします」
私がヒモみたいなプロポーズやめろ。ちょっと揺れた心はシカトするとして、その申し出は受け入れる訳にいかない。
揶揄っているのは分かるが、本当に金欠で困っている女子にそれは無いんじゃないか。
全く、冗談にしても程がある。