休み明けの月曜日。
いつものように早起きして、弁当を作る。相変わらず余白だらけの弁当箱には、せめてもの抵抗としてもやしを詰め込んだ。
貧乏臭さを隠す為の苦肉の策だったが、更に安っぽい見た目になってしまったのは何故だろうか。
「……あ、もう来た」
ボロアパートだからか、お隣や外からの音が響きやすく聞こえやすい。今は外から、一人分の足音が近付いて来ていた。
言わずもがな、あの男だ。初日は渋ったものだが、今となっては足音だけで存在に気が付くようになってしまった。
コンコンッと扉が優しく叩かれる。ボロアパートなのでインターホンなんてものは無い。
「―――…おはよ、獅貴」
ガチャ…と開けた先には、見慣れた美形。朝から眩しいものを見たなぁと半ば目を細めながら呼び掛ける。
因みに今の時刻は6時ジャストだ。日に日に来る時間が早まっているのは気の所為だと思いたい。
「おはよう紫苑。今日も可愛いな」
キラキラッとエフェクトが舞う幻覚を見ながら、いつもの光景をはいはいと躱す。
流石にまだ準備が終わっていない…というか起きたばかりなので、仕方なく獅貴を部屋の中に上げた。靴をきちんと揃えて入ってくる獅貴を見て、意外な行動に目を瞬く。
「ん、どうした?」
「いや…不良でも靴、ちゃんと揃えるんだね」
何だそんなこと、と当然のように肩を竦める獅貴。
確かに人として当然の行いなのだが、いつもこの男の傲慢さを間近で見ている所為か、室内に土足で踏み入る獅貴の図がありありと浮かんでしまうのだ。