全てを知った俺は、けれどその状況をどうすることも出来なかった。出来ることと言えば、弟は本当に何も知らないのだと、関係ないのだと知り渡らせる為に、冷たく接することだけ。



それすらも間違いだとは気が付かなった。



気付けば弟とは一言も話さなくなり、仕事で忙しい母とも会わなくなった。家庭は目に見えるほど崩壊していた。


俺が中学三年の半ば頃を過ぎると、弟も家を空けるようになった。まるで今までの俺の間違いを辿るように、同じ行動をし始めたのだ。



皮肉にも、そのお陰で俺は間違いを思い知ることが出来たのだが。



壊れたものを修繕しようと思っても、それは既に手遅れで。どうにもならない現状を、湯水のように溢れる不安や後悔を、ただ持て余すだけだった。



開き直ったように家庭から目を背けば、途端に体は軽くなる。あれだけ重かった足取りも、同じように軽く。



逃避しては何も変わらないということは分かっていたけれど、俺は逃げたい。純粋に、逃げたいのだ。



自分の間違いを、それによって壊してしまった大切なものを、もうどうにも出来ないのではないかという不安を受け止めるのが怖くて。



余計拗れることは分かっていた筈なのに、俺はどうしてもANARCHYから離れることは出来なかった。帰る場所に迷っている俺の、唯一の居場所だったから。



共感だけが蔓延って、無条件な信頼を得られる場所。尊敬の眼差しを向けてくる後輩。余りにも居心地が良くて、ぬるま湯のように依存性があって。