拾った総長様がなんか溺愛してくる(泣)【完】




「そう、ですかね…心配してるって、アイツにちゃんと伝わってるなら良いんです。考え込んで、誤解しないでいてくれるなら…」



無関心ではないことを、精一杯伝えたいのだろう。けれどどうやって距離を縮めればいいのか測りかねて、拗れ始めてしまっている。


何故か、微笑が零れた。兄弟とは、皆こういうものなのだろうか。『一番身近な他人』というのは、確かに的を得ている気がする。



「事情は人それぞれだと思うけど、私は弟くんが羨ましいなぁ…」



「…それは、どうして?」



不思議そうに問い掛けてくる未星くんに、微笑む。その微笑みは自然に作ったつもりだったが、少し不格好だったかもしれない。



少し、歪んでしまっていたかもしれない。



「家族に心配されるって、幸せなことだよ。ちゃんと心配されてるなって、無条件で安心出来るから」



無条件で安心出来た。あの頃が幸せだった。



紫苑さんのご家族は、とても優しい人たちなんでしょうね。未星くんが穏やかに語る。その通りだ。とても、優しい人たちだった。少しウザったい過保護な父と、それを宥める母。


どれだけ恵まれていたか、今になって漸く思い知る。



「紫苑さんはご家族と一緒に住んでるんですか?」


「ううん、一人暮らし。
両親は小さい頃に事故で亡くなったの」



はっとしたように口を噤んだ未星くんは、次の瞬間申し訳なさそうに眉を下げた。それを慌てて宥める。



「すみません…辛いことを思い出させてしまって…」


「大丈夫。流石にもう慣れたしね」