「不仲…という訳では無いんですが…。
弟が中学に上がってから、少し微妙な関係になってしまって…」
よくある思春期とか、反抗期とかのアレだろうか。男同士の兄弟なら複雑なことも多いだろうなとぼんやり思う。
中学生の弟と、高校生の兄。確かに円満な関係を維持し続けるのは難しそうだ。
「あの、だったら私に手を貸してる暇無いんじゃ…?」
探しているということは、弟くんが居なくなってしまったということだ。家出、とかだろうか。だとしたら今この瞬間も、弟くんを探さなくてはならないのでは。
少し焦り気味に言った私に、未星くんは「あぁいや…」と言いにくそうに、困ったように笑う。
「今日が初めてじゃないんです。よくフラッと居なくなって、でもちゃんと帰ってくるんです。今日はその、何度か連絡しても繋がらないから心配で…」
干渉し過ぎですかね、と苦笑した未星くんに口を噤んだ。よくあることならそれ程心配しなくて良さそうだが、やっぱり兄の心情としてはそうもいかないのだろう。
私には兄弟とかが居ないから理解は出来ないけど、それでも家族を心配する気持ちは分かる。
「…未星くんが見放さないでいるのは、弟くんにとっても嬉しいことなんじゃないかな。一日経たずにちゃんと帰ってくるなら、まだ拗れきってはないだろうし」
驚いたように目を見開く未星くん。少し踏み込みすぎたかと反省する前に、彼が穏やかに微笑んだ。

