火照った頬を冷ましながら、何でもない顔をして未星くんと並んで歩く。軽々と袋を持ち上げる彼を見て、内心驚いた。


かなり細身に見えるけど、結構鍛えているようだ。重そうな素振りは全く見せないし。どちらかと言うと図書室で本を読んでいそうな雰囲気だが、実は体育会系なのだろうか。




「あの、ごめんね、お礼は今度必ず―――」


「いいですよ、お礼なんて。困っている女性に手を貸すのは当然のことですから」




ふわりと微笑んだ彼の表情には、如何わしい策略も企ても無い。どうやら本音のようだ。


なるほど、これは本当にモテるだろうな。チャラい男や私欲に満ちた男と違って、未星くんは天然モノらしい。つまりほんとの好青年。



マズイな、これはうっかりしてたら本気で惚れる。僅かに芽生えた危機感を心の底に押し留めて微笑んだ。



「…そっ、か。うん、ありがとう、本当に」



誤魔化すように浮かべた作り笑いは、気付かれることはなかった。お役に立てたのなら良かったと笑う未星くんに、心が浄化されるのを感じた。



「…そ、そうだ。
ところで未星くんはどうしてここに?」



気分を紛らわせる為に、些か強引に話題を作る。けれど純粋天然な未星くんは、至って疑うような素振りは見せず、素直に答えてくれた。



「あぁ、いや、大したことはないんです。
…実はその、弟を探していて…」



「…弟?」



苦笑混じりの答えに首を傾げると、未星くんは困ったように頷いた。