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気付いたのは、足首に光るアンクレットを見てからだ。紫苑の存在を忘れたことは無かったが、姿は既に忘れていた。


それは時が過ぎたことが原因ではない。ただ俺が、紫苑との幸福な時間を抱えているのが辛くて、記憶の奥底に押し込んだことが原因だった。




紫苑はあの頃と大分変わっていた。



それこそ別人のように。




幼さと無垢さは消えて、その表情は大人びた冷静さと、何かを諦めたような物寂しさに滲まれていた。



幼い頃の活発で無邪気な紫苑は居なかった。



常に落ち着いていて、大口を開ける笑顔は浮かべない。浮かべるのは苦笑、或いは微笑。笑っていても、それは多分、本当の笑顔では無いのだ。



獅貴が紫苑を連れてきたことには驚いたが、紫苑が『紫苑』であると分かってからよく考えると、妥当な流れではある。何せ相手はあの紫苑なのだ。



無自覚な人たらし。無自覚に相手を絆す言葉を発する紫苑は、獅貴にも同じことをしてしまったのだろう。