『ありがとう、ぜんくん』


『っっ……』



俺はただの、臆病者だけれど。狡くて、弱くて、何も出来ないガキだけど。


目の前で、心の底から嬉しそうに笑う紫苑。その笑顔に、全てが報われたような気がして。救われたような気がして。



『また、ね』



紫苑が胸の前で小さく手を振る。片方の手には、アンクレットを大切に握り締めて、まるで俺との思い出も、大事に包んでくれているような、そんな気がしたから。



『―――…あぁ』



最後に見せた笑顔だけは、きっと心の底から浮かべたものだった。