会えるはずないのだ。こんなちっぽけな願望で、現実が変わるわけない。きっと俺たちはもう、二度と会えない。俺も紫苑も子供で、この記憶も色褪せる。
『ぜんくんは私のヒーローだよ。
離れても、また会いに来てくれるから』
信じてる。そう言う紫苑が、枷でしかなくて。
俺はどうしたって、その『ヒーロー』とやらにはなれない。
これは"口約束"だ。
優しくも何でもない、ただの"口約束"。
俺が安心したいが為の、ただそれだけの。
『…あぁ、ぜってぇ、会いに行く』
嘘をつく俺を、どうか許して欲しい。と言っても、俺の罪悪感が消える頃には、紫苑も俺のことを忘れているだろう。お互いに、お互いの存在なんて、消え去っているのだろう。
当たり前のことだと思うものの、胸にぽっかりと穴が空いたような感覚は、慣れなくて。
ブランコの座面から下りて立ち上がった紫苑を、半ば強く引き寄せて、抱き締めた。
『ぜん、くん?』
困惑したような声。その声さえ、今は恋しい。
もう会えないことが、こんなにも恋しく、寂しく、悔しい。ずっと俺はこの小さな体に守られていたのだと思うと、酷く、悔しいのだ。

