8年程前、俺には仲のいい友人がいた。



同じ小学校には確かに、共に遊ぶ友人達が居たが、そいつはそれとは違った。特別な友人だった。


別の学校に通っていて、毎日会うことは無い。だが、ふと会いたいと思って公園へ行くと、彼女は必ずそこに居る。



その日は天気が少し悪くて、彼女はきっと居ないだろうと思いながら。それでも俺は、どうしても彼女に会いたい気分で。



きっと居ないだろうなと諦観しながら、雨の降りそうな暗い空を横目に、俺は公園へ向かった。





『…ぜんくん』



『――っ…"紫苑"!』





結果として、彼女は、紫苑はそこに居た。薄暗い天気と湿気のせいで湿ったブランコに、彼女は一人、捨てられた迷い子のような目で、座り込んでいた。



『紫苑…どうした…?』



すぐに駆け寄って小さな肩に手を置くと、紫苑は忽ち泣きそうに顔を歪めた。



俺が知る同級生の中でも、比較対象が挙がらないくらい綺麗で可愛らしい顔は、涙で塗れてしまった。




『ぜんくん、ぜんくんっ…!』




俺の名前を繰り返し呼んで、抱き締めるというより、しがみついてくる彼女。