「…あ」
「………」
静寂が流れて動けずにいると、数秒後に鳴り響く鐘の音。どうやら昼休みが終了したようだ。チラリと倉崎くんを一瞥したが、立ち上がる気配は無い。
今日の授業も、全て出席しないのだろうか。
「…行かねぇのか?」
「行く、けど…倉崎くんは…?」
問う前に先手を打たれて、僅かに動揺する。慌てて頷いて首を傾げると、彼は嫌そうに顔を歪めた。
「行っても意味ねぇだろ。あれは授業じゃねぇ」
「………」
苦笑するに留めた。確かに彼の言う通りだ。
教師は、獅貴達を異様な程に恐れているように見える。それがどうしてかは分からないが、とにかく授業がまともに行われたことはほぼ無い。
クラスメイトも真面目に受ける人間は一人として居ないから、大して問題にもなっていないが。
表向きは『普通の高校』の旗を掲げているが、どう見ても典型的な不良校だ。
「お前、あの無意味な授業に毎時間出てんのか?」
有り得ない、と目を丸くして問い掛けてくる。聞いても確かに無意味なので真面目に受けはしないが、一応学校に通ってる体は演じなければ。
これでも花の高校生なのだ。授業受けないとか学生じゃないし。

