「……あ」
「…?」
考え込むように視線を落として、ふと気付く。
何となしにズボンのポケットから片手を出した倉崎くんを眺めて、その拳の甲に赤く染まった部分が見えた。何かで切ってしまったのだろうか、無数の小さな傷跡だ。
手の甲がそこまでボロボロになるなんて、何処で何をしたんだと首を傾げる。
「…あの、近寄ってもいい?」
ガタッと反射で立ち上がったはいいものの、このまま近付いてもいいものだろうか。問い掛けると、倉崎くんは怪訝に表情を歪めながらも小さく頷いた。
「ごめんね、ちょっと触るよ」
ブレザーの胸ポケットに手を突っ込んで、中に入っていた無地の絆創膏を取り出す。
椅子に座った倉崎くんのすぐ横に膝をついて、重力に乗ってダランと下げられた右手に手を添える。
「っ…おい、何を…」
驚いたように体を揺らした倉崎くんに内心謝りつつ、顔を上げてへにゃりと笑った。
「怪我してるから、
…絆創膏、付けてあげようと思って」
彼の手を支えていない方の手で、絆創膏を指先で持ち倉崎くんに向けてひらひら揺らす。彼は納得したように目を細めた。

