「………」
その横顔に、ふと浮かぶ既視感。
こんな整った顔立ちをした人を、私は以前にも見かけたことがある気がする。最近、という訳では無い。もっと前の、褪せた記憶の中にあるような―――
「…お前、端でちょこまかすんな。ここに居座るならもっとこっち来い」
今のを軽く要約すると『視界の端は目障りだから近くで大人しくしてろ』だ。確かに端で何かが動いていたら気が散る。
私はへらっと笑って、扉の前から教室の真ん中へ入り込む。一番近くにあった椅子を引き摺ってきて、倉崎くんからほんの少し離れた位置に座った。
「…いつも、ここに居るの?」
何となく話し掛けて、やっぱり何も言わない方が良かったかと後悔する。彼はどうやら私を嫌っているようだし、あまり馴れ馴れしく近付くのも問題だろう。
ごめん、何でもない。そう言おうと口を開こうとして、それより先に倉崎くんの視線が此方に止まった。
「…あぁ」
短い返事。それでも、仏頂面で懐かない大型犬が反応を示したような、何とも言えない感動が身を包む。

