だから逃げたのだが、結局行き着いた結末の自分の阿呆さ加減に大きく息を吐く。これじゃ獅貴に何も言えない。君から離れようとして迷子になりましたとか、ダサすぎて言えるわけない。
これはもうアレだ。今は思考を放棄しよう。折角気持ちよさそうな空き教室棟を見つけたのだ。戻る時はしっかり道を覚えて、今度ゆっくり日向ぼっこに来ようじゃないか。
「…何か用か」
ズボンのポケットに手を突っ込んで、眉を釣り上げ問い掛けてくる。怒ってるのかと身構えたが、どうやらそうでは無いらしい。
そもそも顔が少し厳ついから、強ばった声が怒ったように聞こえるだけなのだろう。
「…ううん、何でもないよ」
両手を振って苦笑する。興味が失せたように視線を逸らした倉崎くんは、窓の外を退屈そうに眺めて姿勢を崩した。
「………」
椅子に浅く座って、背もたれに気怠げに体を預ける。机に上げた足は筋肉質で、遠目で見ても鍛えているのがよく分かった。
それに、ふと気づく。横顔をきちんと眺めたら、中々整った顔立ちもしているらしい。

