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目を覚ますと、案の定青年は居なかった。


まぁ予想通りだ。我に返って冷静に考えたら、見知らぬ女のボロい家で一夜を共にしたなんて最悪な思い出だろう、悪いことをしてしまった。



「…あったかい」



まだ体に温かさが残っているのが辛い。


あの青年、傷はもう大丈夫なんだろうか、治っているならいいんだが。



「…うん、忘れよう」



こういう記憶は忘れるに限る。どうせ彼だって忘れているだろうし。


もう二度と会うことは無い、むしろ会わないことを祈るばかりだ。不良怖いもん。




今日からこそ、平穏な日々を送るのだ。




「…はぁ、なんか、変な気分」


慣れない夜を過ごしたからだろうかと肩を竦めるが、青年の顔が何故か頭から離れなかった。

結構端正な気がする顔もちゃんと見ることは出来なかったが、あの顔に傷が残らなければいい。


そう祈って、寝惚けた体を叱咤し立ち上がった。