「え、っと…久しぶり、禅く…倉崎くん?」
流石に嫌いな女に名前呼びは辛いかと思い、慌てて苗字で呼び直す。何も言わずに眉間に皺を寄せた彼に、笑顔を作ったまま冷や汗が流れた。
教室後方に積み上がった机と椅子。その内の一つを軽く前に出して、椅子に座って机に足を上げている。
窓辺を定位置としているのだろうか。暖かそうなその場所に、ここはお気に入りなのかなと、漠然と考えた。
「…どうしてここに?」
「お前こそ」
そうだよね、私がここに居るの疑問だよね。
自分で聞いて何だけど、確かに倉崎くんがここにいるのはあまり違和感が無い。見た目が典型的な不良だからだろうか、如何にも『サボってます』って構図が、違和感をかき消している。
「私はちょっと…道に迷って…」
「は?」
馬鹿かお前、って視線が痛い。その通りだけど、呆れるのは最もだけども…!!
獅貴のくっつき加減がそろそろヤバい、っていうか重いのだ。夏も近いからあんまり抱きついてこられると暑いし。