小さく呟いた私を、獅貴が背後から包むように抱き締める。項に口付けるように顔を埋められ、擽ったくて身を捩った。




「ん…獅貴…?」



「……俺が紫苑と居たいだけだ。
…他の奴が何を考えていようと関係ない」




傲慢で暴君な獅貴らしい。微かに笑い声をこぼそうと肩を揺らしたが、おかしな気持ちは湧いてこなかった。ただ、代わりに少し、目頭が熱くなっただけで。



唇を引き結ぶ。私の動きは背後からは見えないはずなのに、獅貴は全てを見透かしたように、抱き締める腕を強めるだけだった。




「…しーちゃん」




可愛らしい、子供のような無垢さを残した声。顔を上げると、陽葵が幼い印象を醸して微笑んでいる。




「りっくんはね、いい子なの。でもよく知らない人にはちょっとだけ冷たくて…。きっとしーくんのことを、心配してるの」




だから、と区切って、陽葵は笑う。花が綻ぶように。




「"知らない人"じゃなくなったら、りっくんはきっと、しーちゃんを好きになるの」




それは何だか、大人を警戒する子供のような。傷付きたくないから突き放す、不器用な少年のようだと思った。