「………」



律くんは感情の読めない無表情で、真っ直ぐと獅貴を見据えていた。あまりにも真剣そうな面持ちだから、私は何も言わずに口を噤む。


よく分からないけれど彼には、いや、彼"ら"には、その身内だけでしか伝わらない何かがあるんだろう。




「絶対、認めないんで」




静かに言い放って、彼は踵を返す。困ったように微笑む鴻上さんの脇を横切って、躊躇いのない速さで出口へ向かって行った。



「…りっくん…」



悲しそうに眉を下げる陽葵。時折チラリと私の方を一瞥するのは、心配だからだろう。安心させるように、にこっと笑った。




「……」




入って来た時とは裏腹に、ドアを閉める音は静寂に包まれて、微かにベルが音を奏でるだけ。



獅貴は律くんの背をじっと見つめていて、その瞳の奥は冷静で焦りが無く、だからこそ更に、居心地が悪かった。




「…私、ここに居てもいい、のかな…」




元々部外者だし、なんだか獅貴達の間には大きなものが絡んでいそうだ。何も知らない新参者の私が、ここにのうのうと居座っていいものだろうか。