「総長の…女…?」
心底驚いた、とでも言うように、灰色のイケメンは目を見開く。その場で立ち尽くした。
「…嘘だ…総長が女に絆されるわけ…」
子犬が飼い主に捨てられたような、そんな背景が見えた。驚愕に悲痛を込めた目で此方を見つめないで欲しい。私が泥棒猫みたいな立場になっちゃうだろ。
「はぁ…」と溜め息を吐いて成り行きを見守ろうと他人事化を徹底する。しようとしたが、そう簡単には楽にさせてくれない。
「おいお前」
「初対面相手にお前て…」
苦言は胸の内に仕舞っておこうと思っていたが、口に出してしまった。
閉じた目を再び開くと、今にも殴り掛かって来るんじゃないかと錯覚するほど殺気の籠った視線で射抜かれる。
「…………」
ふっ…悪いけど私は怖気付いたりしないよ?なにせここ最近色んな輩に睨まれてるからね、もう慣れたものだよ。
「紫苑…大丈夫か?」
嘲笑うように肩を揺らしたが、どうやら震えていると捉えられたらしい。なんか心配したような口ぶりだけど、全ての元凶お前だからな。

