「…そう、じゃあこれでチャラね。私が君を救ったことはこれで貸し借り無し。いいよね?」


「…あぁ」


こくんと頷く彼に笑みがこぼれる。


胡座をかいて膝の上に私を乗せた青年は、少しの隙間も許さないとでも言うように強く抱き締め直してきた。



「…あったかいな」


「……ん、毛布が無いから、この部屋で温かさを感じたのは初めてだよ」



私の独り言に、青年は更に抱き締める力を強くする。


「…じゃあ、お前に毛布買ってやる」


「馬鹿、そういうのいいから」


長続きする貸し借り関係は争いしか産まない。


こういうのは当日にバッサリあっさり決着を付けるのが筋というものだ。



「ありがとう、でも君を助けたのも私が勝手にしたことだから、それに礼を尽くすことはないの」


「それでも、俺がお前に礼を尽くしたいだけだ」



真面目そうな顔に、何も言えなかった。