「わあ……、ゆきちゃん、髪明るくなったねぇ。

お土産もありがとぉ。ぼく林檎好きなのー。熱ちょっと下がって食欲湧いてきたから、食べるね?」



「……の割に、まだ舌っ足らずな話し方だけど」



髪を染めて、夕食前に帰る途中。スーパーに立ち寄り、無難に林檎を買った。丁度果物は食べていなかったようで芙夏は喜んでくれたけど。

お嬢のところに行くか悩んで、とりあえず別邸に戻ってきたら、リビングにははとりだけ。



ほかのヤツはまだ帰ってきてなくて、芙夏は本邸の部屋で寝てると教えてくれたから、来てみればお嬢も一緒だった。

帰ってきてから付きっきりで看病していたらしい。今は芙夏の夕飯を最終的にどうするかチェックするとかで、さっき部屋を出ていった。



「ゆきちゃんの髪の色、レイちゃんが決めたのー?

さっきレイちゃんに期待以上って言われて嬉しそうな顔してたねえ」



「お前そういうとこ見てなくていいから」



なんだこのマセガキは。

期待以上って言われて嬉しいって思ったのは事実だけど、改めて他人主観で言われるのは嫌っていうか恥ずかしいっていうか。




「ふふ。レイちゃんらぶなんでしょー」



「……高熱の戯言だと思っとくわ」



「隠しても無駄だよー?

こいちゃんもゆきちゃんも、わかりやすいもん」



……ああ、そうだった。

朝に胡粋と言い合ってたんだっけ、と思い出しながら身体を起こした芙夏の頬に手の甲で触れる。熱が下がった、と言っていたけど、触れてみたらまだ熱い。



「芙夏、まだちゃんと寝てなきゃだめよ?」



襖が開いて彼女が入ってきたかと思うと、芙夏にそう言って俺の隣に腰掛ける。

寝てなきゃだめ、とは言ったものの、俺が買ってきた分の林檎を切ってきたようで、食べる?と彼女は問う。



「お嬢、俺はそろそろ別邸もどるな。

……ほんとは、もうちょい一緒にいたいけど」