ずっと傍に

「お前、何してんの?」


暗くて良く見えないけれど、暗闇でも分かるくらい目の前の男は



とても美しく妖艶な空気を纏っていた



「っち、聞いてんのかよ」


あまりにも長く見つめすぎていたらしく



目の前の男は心底面倒くさそうに視線をあたしから逸らした




「海...」



そう言えば男は再びあたしに視線を戻し


「あ?」


暗闇でもわかるくらい眉間にシワを寄せた。


何言ってんだこいつって顔に出てるよ。



「海、見に来たの」



この海はあたしの思い出の場所だから




「海って...こんな大雨の日にか?」





その言葉に頷くと、男は徐ろにあたしの横にしゃがみ込み



あたしの顔を覗いた






「...家は?」



「...え?」



何が言いたいのか分からず顔を傾げると




はぁぁぁと大きいため息をついた





「お前の家、どこだ」


家、ね。



「すぐそこ」




「だからどこだよ」




「すぐそ……」「どこだ」



はぁぁぁ、埒が明かない。




とんだ王様に捕まったもんだなと思いながらもあたしは家の場所を何となく伝えた




「繁華街抜けた奥」



そう言えば、...送るとだけ言い




男は立ち上がった





それをぼーっと眺めていると



おい、と言い視線をこちらに向けている姿にハッとし




あたしは慌てて立ち上がった、いや立ち上がろうとした





しかし、途端に足に力が入らなくなり




あたしは足から崩れる様にその場に倒れた



男は傘を持っていない方の手であたしを咄嗟に抱え




「っ…!?おい、しっか…り……ろ」




何か叫んでいる男の姿を最後にあたしの意識はプツンと途切れた