「あっちゃんってさ、ワルい男がタイプなの?」


あっちゃん、というのは、私のあだ名。


「え?どうして?」

「だーって、入学当時からずっと城田のこと見てない?」

「へっ? み、見てた?」


今日も放課後、城田くんが教室を出ていくところを見ていると、クラスメートで、高校に入学して最初にできた友達のたまちゃんの口から突然城田くんの名前が出てきて変な声が出た

たまちゃんは色白で、重ためのショートボブが似合う女の子。奥二重の瞳はきゅっと目尻が吊り上がっていて、なんだか猫みたいで可愛い。

と、いうか、

私たまちゃんに気づかれてしまうほど城田くんのこと見てたかな…?!恥ずかしい…。


「見てるよぉ、好きなの?」

「そ、そういうわけじゃ…ただ、なんか気になって」


好き…ってわけじゃないと思うんだけど、困ったことに私は恋愛に疎いから好きか好きじゃないかもよくわからない。

ただすごく気になるのは確か。それが恋なのか、観察対象って言っちゃうとあれだけど、そう思っていて気になっているのかは自分ではよくわからない。


「あいつコワくない? 変なうわさもあるし」

「こ、コワくないよ、城田くん毎朝挨拶してくれるし、それに真面目で全然うわさと違う人だよ」

「…うーん、でもあたしはあっちゃんのこと好きだからハッキリ言うけど、確かにうわさよりはまともなヤツだと思うよ? 普段の態度見てるとね。だけど火のないところに煙はたたないって言うじゃん?」


…確かにそうなんだけど、たまちゃんの言う通りなんだけど

たまちゃんは、気を悪くさせたらごめんね、と謝ってきたけれど、謝ることじゃないよって返す。