その日から、何となく気になって城田くんを観察することが増えた。
城田くんは見た目とは裏腹に、すごく静かなひと。
友達は多い…のかな?
城田くんの友達はやっぱり少し派手な見た目だけど、話しかけられているのを教室内でもそれ以外でも見かける。
城田くんが積極的に会話に参加してる様子はないけれど、友達といる時の彼の表情が少し柔らかくなるのを見てると、何だか心がホッとする。
あとは、宿題のノートを集めた時にチラッと見えた文字が綺麗だった。
お習字の教室に通っていたのかな?と思うほど整ったバランスのいい文字が、また、とてつもないギャップを植え付けた。
城田くんの赤い髪は、毛先がぴょこぴょこ跳ねてて、ちょっと可愛い。そして、その奥から覗く黒い瞳がとても綺麗。
朝も早くに登校することが多い。
私が掃除をしている間は、ふらっと教室からいなくなってしまうけど、終える頃には戻ってきてまた本を読んでいる。
もしかしたら、本当は教室で本を読みたいけど、掃除をしている私に気を遣ってくれているのかもしれない。
…単純に同じ空間にいたくないのかもしれないけれど。
でも、毎朝「おはよ」って言葉をかけてくれる声が優しくて柔らかいトーンだから、きっと前者だと思う
放課後は少し教室に居残って、十五分ほど本を読んだ後帰っていく。
部活には入っていない。と思う。
そのとき、必ず本は机の上に置いていく。
忘れ物なんかではなく、意図的に置いていたものだったみたい。



