「あっ、うん、いつも…かな」


ふぅん、と、優しい声のトーンのわりにはそっけない返事をした城田くんは私のすぐそばに来る

さっきまで私が触れていた場所を、城田くんの大きな手が覆う。

あ……、手、綺麗。ゴツゴツしてて男の人って感じなのに、長い指先は手入れしている私の手より綺麗。


何かを探るような瞳がこっちを見つめてる。


そんな仕草に少しドキッとして、思わずうつむく。


「…久原さんって、イイコだね」


イイコ…?

聞き間違えかと一瞬思ってしまったけど、私の耳に届いたその声は、すぐそばから聞こえる。


目線を少し彼の方へ向けると、その瞳はまっすぐ私を捉えていた

私のこと?
イイコ、なのかな…? って、そういえば、名前!
城田くんって私の名前しって…る…?

いや、当然かもしれない、いちおう、同じクラスだし…。今まで一度も話したことがなかったけど。

城田くんが、地味な私の名前を知ってるとは思わなかった。

勝手にだけど、他人にあまり興味がないひとだと思っていたから。


「ありがとう…?」


頭が混乱してうまく言葉が出てこない。

絞り出すように感謝を述べると、城田くんは表情を崩した。


柔らかくて優しいその表情に、また私は恥ずかしくなった。