まるで、蛇に睨まれた蛙だ。
体が固まって動かない。
あまりに真っ直ぐ、困ったように見つめてくる、その真っ黒な瞳に映る自分の姿を見つめた。
「久原さんって、俺みたいなの苦手だと思ってた」
「え?な、なんで」
予想外の返答に首を傾げるも、城田くんは目をそらしてまた歩き出す。
「いや、今日で勘違いってわかったから、たぶんもう避けない」
私、城田くんに勘違いさせてしまうほどひどい態度を取ってたかな
それなら、きちんと謝りたい。
「あの朝の、掃除」
だけど、私が口を開く前に城田くんが喋り始める。
城田くんって、思ったよりたくさん喋る。
だけどその会話のテンポは、ゆっくりだったり早かったり、私にはすごく心地いい。
「うん?」
「朝、久原さん毎日やってるでしょ」
「うん、日課みたいなものなんだ、中学の頃からやってて…あ、でも中学の頃は朝掃除って当番があってね、みんなサボりがちだったから代わりにやってるうちに、なんか私が朝掃除係みたいになっちゃって」
実は、中学の頃はちょっと苦痛に思うこともあった。
ちょうど親の離婚が重なった時期は、バタバタしてて掃除できない日もあって、そうすると、一日やらないだけで教室がなんだか淀んだ空気になっている気がして、それからは欠かさず毎日やるようになった。



