いつものような跳ねやはらいがきちんとしてある文字とは違って、わざと崩して書いたような文字なのに、やっぱりバランスが整っていて綺麗な字。
これ、横にカラフルなチョークで可愛らしい簡単な絵もある。ケーキやコーヒーのカップ。
まさか
「これも?」
「…俺にこんなポップな絵が描けると思う?」
城田くんはギャップだらけだからあり得なくはない。
だけど、その言い方だと、どうやら絵の方は違うみたい。
城田くんじゃないなら、ナギサさんかな?
それとも、他にバイトの人とかいるのかな
いろんなこと、想像する。
城田くんがここでバイトしている様子、他の人とコミニュケーションをとる姿、黒板にせっせとメニューを書く姿。
城田くんのこと、あまりにも知らなさすぎて、私には全部うまく想像できない。
だけど城田くんは、お母さんのことを悪く言った私を普通と言ってくれた。
ずっとワルイコだった私を、全部話を聞いた上でイイコだよって言ってくれた。
私は城田くんの好きなものも、友達関係もなにも知らないけれど、城田くんがすごく優しいことだけは、知ってる。
いつの間にか、時刻は二十時半を指していて、もうすぐ閉店だからとお暇することにした。
一人でお店を回しているナギサさんにお礼をすると
「いつでも、好きなときに来てね」
と笑ってくれた。



