青、こっち向いて。



ぐるぐるとずっと渦巻いていた私の心の何かが、少し晴れた気がした。


「さっき、諦めがついたって言ってたけど、あれは?」


「…今までは、ちょっと期待してたの。本当は大切に思ってくれてるんじゃないかって。だからお母さんにとって都合のイイ子どもになりきって。でも、違うってわかったから、もう都合のイイ子でいるのはやめる。あれは、そういう意味」


精一杯、強がって笑って見せる。


強がりを見透かされている気がして、城田くんの視線から逃れるようにうつむく。


チリン、と扉を開ける音がして、私たち以外のお客さんが来たことで、会話が途切れた。


半分、助かったなんて思いながら、いつのまにか空になったカップにまた注ぐ。


他のお客さんの前でする話ではないと判断したのか、城田くんはカバンから本を取り出して読み始めた。


その姿をちらっと確認しながら、さっきはじっくりと見ることができなかった店内を見渡す。


ナギサさんの趣味なのかな、このアンティーク調の内装って。

だとしたら意外だな、と思いつつ、おしゃれなナギサさんだから妙に納得できる自分もいた。


チラッとメニュー表の字を見て、さっきはただ似てるだけの字だと思ったけど、ここでバイトしているって聞いて、よりそれは確信に近づいた。


「これって、もしかして城田くんの字?」



疑問はなるべく解消したくてたずねると、城田くんはチラッと私の視線の先をたどった後「よくわかるね」と言った。


やっぱり、城田くんの字だったんだ