「離婚してすぐにお母さんは彼氏を作って、家に連れ込むようになって、その人がある日私に言ったの。“青ちゃんのお父さんはお母さんを傷つけるゴミクズだったけど僕は違うからね、パパって呼んでくれたら嬉しいな”って。お父さんが特別好きだったわけでもないけど、よくわからない人に知ったような口を聞かれるのは嫌だったから言い返しちゃったの。そうしたら、私は邪魔者になって、お母さんは私をワルイコって罵った」
城田くんは、いつの間にか私をまっすぐ見つめていた。
思わず、パッと目をそらす。
「それから、彼氏と会うときは私は外に出ていなくちゃいけなくなって、この前夜外にいたのも、それが理由で…。今日もね、言われたの。だから、この前あったことお母さんに話して、家にいさせてほしいって頼んだんだけど、ダメだった。言うこと聞かないワルイコの私はいらないんだって」
ひとしきり話して、ふうっと息を吐く。
「だから、私は城田くんが言ってくれるようなイイコじゃないの」
本当に、私はイイコなんかじゃない。
私は、自分勝手なお母さんも、私たちを捨てて出て行ったお父さんも大嫌いだし、自分だけ幸せならそれでいいって思えるくらいには冷たい人間だ。
城田くんは、全て聞き終えると、黙ってしまった。
こんな重い話して引かれたのかもしれない。
好きな人に私の嫌な部分を見せてしまったこと、今さら後悔しつつ、スコーンに手を伸ばす。



