青、こっち向いて。



「ハーイお待たせ〜!!アイスフルーツティーと、カップが二つね。これは青ちゃんに特別サービスのスコーン」


軽快な声とともに、ナギサさんがやってきた。

ナギサさんが現れるだけでなんだか空気が明るくなる。


「ありがとうございます、すごく美味しそう…!」


フルーツがたくさん入った紅茶のポットと、ティーカップが置かれ、私の前にだけスコーンとクロテッドクリームとジャムも差し出される。


「このクリーム、大輔が仕込んだやつ。あ、レシピはアタシだから安心して食べてね」


「へ? 城田くんが…」


どうして?

私の疑問が顔に出ていたのか、ナギサさんはにっこり笑って答えてくれた


「ここでたまにバイトしてんのよ、こいつ。こんな見た目で愛想の一つも振りまけないから接客はさせられないけどね」


え!? 城田くんがバイト??


でも、接客はさせられないと言ったナギサさんの言葉に、失礼かもしれないけど妙に納得してしまった。


「もう営業時間だからアタシは作業してきちゃうけど、青ちゃんたちは気にせずゆっくりしていってね!」


ヒラヒラと笑顔で手を振るナギサさんに頭を下げて、紅茶をカップに注いでくれていた城田くんにお礼を言いつつ、ぐっと距離を詰める


「こんな素敵なところでバイトしてたなんて…!」

「さっきも言ったけど、知り合いだから時々手伝ってるだけ」


「もしかして前に助けてくれたとき、バイト終わりに本屋さん寄った帰りだった?」


私の質問には答えてくれずに、詰めた距離を離されて、視線を外すと城田くんはフルーツティーを一口飲んだ。