「あの、ありがとう、無理やり交換させたみたいになってごめんなさい」

「その謝るの、クセ?」


スマホをポケットに戻して、城田くんはパンが入っていた袋をぐしゃっと丸めて本を手に持つ。


「へ、そ、そんなに謝ってたかな」

「自覚ないなら、まず自覚した方がいいよ。意味もなく謝られても、こっちが悪いことした気分になる」

「ご、ごめんなさ……気をつけます」


また謝ってしまった。


城田くんは、怒っては、ないと思う。

本当にただの注意。


だけど冷静な城田くんの声って、なんか身が引き締まるような思い。


うつむいて、そんなに謝ってたかなって思い返してみる。でも確かにそうかもしれない。謝ってたかも。


「…悪い、言い方きつかったかも」


「あ、ううん、はっきり言ってくれるのすごく助かる。すぐ直すのは難しいけど、少しずつ頑張ってみるね、ありがとう」


笑った私に、城田くんは無表情のまま頷くとそのまま背を向けて去っていってしまった。


今度は呼び止めなかった。


本当はもっと話したかったけど、城田くん、本持ってたのに私がいるせいで一度も読まずにいた。たぶん、邪魔してたんだ。


ごめんね、と、もう見えなくなった背中に、心の中でつぶやいた