青、こっち向いて。




やんわりと、とかじゃない。はっきりと拒絶したような声。

汗がすっと引いていく。

心臓はさっきとは違う音を立て始める。さっきとまた違ったイヤな感じだ。


……本当は、城田くんは優しいから交換してくれると思った。

やっぱり、私なんかと、イヤだったかな。


当たり前だ、昨日は散々迷惑をかけて、朝も掃除なんて余計なことして彼の読書の時間を邪魔してしまっている。


重い空気が流れる。



「…でも、私はやっぱり城田くんと話したいです」


いつもだったら、絶対に潔く諦めていたはずなのに。
その重たい空気を打ち破るように私は、必死に声を振り絞った。


喉のところがきゅうっとなって涙が出そうになる。


「…泣くのは、ズルいわ」


まだ、泣いてないけど、多分目には涙が溜まって潤んでいるはず。

私を見た城田くんは、困ったように笑った


うん、確かに、泣くのはズルい。でも、それで城田くんと話せるなら、ズルくてもいい。


だってどうせ私は、“ワルイコ”だもん。


「久原さんは、俺みたいなの苦手だと思ってたんだけど」



え、な、なんで?

戸惑う私の目の前まで城田くんは来てくれると、ポケットからスマホを取り出すと、なにか操作をした後、私に向かってスマホを差し出してくる


「ハイ、どーぞ」


スマホの画面にはQRコード。メッセージアプリのものだ。

慌ててメッセージアプリを開いてQRコードを読み取る。


大輔、というアカウントが出てきて迷わず追加する。

アイコン、なににしているのかなって気になってたけど、予想に反してというか、むしろ予想通りというか、初期設定のままだった。