青、こっち向いて。



ゆっくり振り返った城田くんは少し驚いた顔をしていた。


大きく開けられた瞳が、すごく綺麗で見惚れる。


「…一緒に、食べませんか」


おずおずと見上げて言えば、黙ったまま私の方に歩み寄って、少し離れた場所に城田くんは腰を下ろした。

思ったよりすんなり一緒にいてくれるところを、やっぱり意外だと思った。


「久原さん、俺のことコワイんじゃないの」


サンドイッチの袋を開けて中身を取り出しながら、城田くんの言葉に首を傾げる。


「え? 城田くんはコワくないよ、昨日とかも助けてもらっちゃったし、それに毎朝挨拶してくれて、優しい人なのかなあって思ってました」


へへ、と変な笑い声を付け足す。

さすがに好きな人に直接これを言うのは、ちょっと照れてしまう。


「…は、見る目なさすぎ」


鼻で笑って城田くんもパンの袋を開けて頬張る。


でもその声は棘のあるものじゃなくて、ちょっと呆れたような、照れたような、なんだか優しい声だった。

表情は相変わらず、“無”って感じだけど。


「久原さん普段弁当じゃなかった?」


黙々とサンドイッチを食べていたときに、まさか城田くんの方から話しかけられると思ってなかった私は軽く咳き込んでパックのジュースを一口飲んだ


「う、うん、お弁当だよ、でも昨日はちょっと買い物行けなかったから、今日は購買にしちゃった」

「え、もしかして弁当自分で作ってる?」

「あ、うん、うちお母さん料理得意じゃないから」


咄嗟に嘘ついた。お母さんが料理得意じゃないなんて、本当は作ってもらえないだけだ。


小学校の頃は、遠足行くたびに作ってもらえるお母さんのお弁当が楽しみで仕方なかった。