読み始めるととても惹かれる文章で、すらすらと読めてしまう。
あ、これ面白い。
ページをめくる手が止まらないけれど、お腹もぐーっと音を立てるから一旦本にしおりを挟んで先にナゲットを食べてしまう。
ペロリと平らげてまた本を開く。
そのまま、どれくらい時間が経ったのか、辺りが少し静かになった気がして、ふとスマホの画面を見ると二十時を過ぎていた。
本は半分くらい読んだかな。
お母さんからは三十分ほど前に、《今日は夜お仕事になっちゃったから出かけるね、明日の朝は悪いけどコンビニで済ませて》と、土下座しているスタンプと共に送られてきていた。
“お仕事”が、本当かどうかはわからないし、私は知りたいとも思わない。
だったら、もう少し早く帰ったのに、って少しモヤモヤした気持ちを抱く。
いつもこんな感じで、私はお母さんに振り回されてる。
だけど、きっとそれも私がワルイコだから、仕方ないこと。そうやって割り切らないと、悲しくなる。
本を買った時に入れてもらった書店の袋に入れて、片付けを済ませてからお店を出る。
辺りはすっかり真っ暗になっていた。
学生の姿もまばらで、私は少し歩く速度を早める。
駅から少し歩いたところで、コンビニが見えてきた。
スマホに送ってもらったお金、少し余ったし、何かスイーツ買っちゃおうかなーなんて悩んでいると、その前でたむろしている集団が見えて少し身構えた。
わ、やだな、いかにも不良って感じだ。
コンビニに寄るのはやめておこう。
着用しているのは地元では有名な不良高校のもので、そこの前を通り過ぎるのをためらった。
けれど、帰り道はここしかない。
こんな時間、裏道の方が絶対危険だもん。



