青、こっち向いて。



夜ご飯食べて帰ってきて、と言うことは二十時過ぎまでは家に帰らないほうがいいんだろうな。

適当に駅前の本屋さんによって、それからファーストフード店で時間を潰そう。


そう決めて、家とは反対方向に歩みを進める。


しばらく歩くと学生と会社員でごった返す駅の向かいにある本屋さんに着く。


私は一直線に小説の新刊コーナーに向かう。

城田くんの本を読む姿を見てたら、私も久しぶりに読みたくなってきてしまったけど、いざ本屋に来るとなんのジャンルを買おうか迷っちゃうな


…あ、これ、この前城田くんが読んでた本だ。

この前、お昼休みに教室でお弁当を食べていた時、城田くんの机にクラスの男の子がぶつかって、この本が落ちた。いつも被せてあるブックカバーがその拍子に外れて、見えた表紙が確かこの本と同じだったと思う。


ぶつかって落とした本人はかなり焦って『やべぇ、俺殺されるかも』なんてこぼしていたけど、ちょうど城田くんはお昼を違うところで食べていたようでいなかったからその男子は丁寧にブックカバーをかけて戻していた。

うん、間違いない、この本だった。


新刊の紹介文には、耳の聴こえない女性とピアニストの男性とのラブストーリーと書かれていて、またギャップを植え付けられる。

ラブストーリとかも読むんだ


だから手にとってお会計を済ませたのは、たまたま。

きっとこれがホラーとか、SFものだったら絶対に買わなかったと思う。ラブストーリーなら私も好きだし読めるかも、なんて思った。

時刻はまだ十八時半を回ったところ、まだ帰れるまで時間あるなぁ


予定通りファーストフード店に入って、ナゲットとドリンクを注文すると、学生があまりいない席に座ってさっき買ったばかりの本を開いた。