たまちゃんはバイトだからと、その後すぐに教室を出て行った


ちょっと微妙な空気になってしまったけど、たまちゃんの言うことは確かに一理あると思うし、私も逆の立場ならきっと同じことを言ったかもしれない。

明日きちんとたまちゃんにハッキリ言ってくれてありがとうとお礼を言おう。

私も帰りの支度をして教室を出る。


昇降口でローファーに履き替えたところで、スマホの通知音がしてチラリと見ると、お母さんから。


《ごめーん、お金送るから今日はお友達とでもご飯食べてきてね〜》


一緒にsorryと文字が入った女の子のスタンプが送られてくる。

私はそれに返事をすることなく、既読だけつけて校舎を後にする。


お父さんは、私が中学三年の春に出て行ったきり、会っていない。

お母さんはそれから人が変わってしまったように、知らない男の人を家に連れ込むようになった。

昔から家族仲はあまり良くなかったと思う。だからお父さんが出て行ったときも、わりとすんなり受け入れられた。


けれど、これはいまだに慣れない。


『あーちゃんがワルイコだから彼、帰っちゃった』


一度、お母さんが連れてきた男の人が、お父さんの悪口を言った。それが許せなくて言い返したらその男の人は怒って帰ってしまって、お母さんは私を責めた。


それからお母さんは私をワルイコと言って、彼氏と会うときは私を家から追い出すようになった。