「また、あんたか」
声の主に向かって蓮斗の嫌そうな顔。

「俺の秘書から手を放してもらおう」

近づいてきた奏多さんが手をかけると、不思議なことに私から蓮斗の手が離れた。

「邪魔するな。俺は芽衣に話があるんだ」
「彼女はないと言ったはずだが?」
「お前は黙っていろ」
蓮斗の声がどんどん大きくなる。

ダメだ。
ここは会社の前だし、騒ぎを起こせば人目にもつく。
早く騒ぎを納めなくては。

「蓮斗やめて、お願い」
「じゃあ、ついてくるな?」
「・・・うん」
そう答えるしかなかった。

「芽衣ッ」
奏多さんが怒っている。

でも、今はそうするしかない。
蓮斗ともう一度話をしよう。
一度で無理なら何度でも話して、わかってもらおう。

「絶対に、行かせない」
「え?」

今度は奏多さんが私の肩に手をかけた。

「手を離せ」
「イヤだ」
「芽衣が行くって言うんだから、邪魔するな」
「イヤだ、行かせない」
「お前、ふざけるな。芽衣は俺の女なんだよ。お前は引っ込んでろっ」
感情のままに叫ぶ蓮斗に周囲の視線が集まる。

ちょうど退勤の時間だから人も多いし、中には奏多さんを知っている人もいるかもしれない。
そう思うと気が気じゃない。

「お願いだから、もうやめて」
私は必死に2人を止めていた。