数時間後、雄平は数人の履歴書を俺の前に置いた。

「語学ができて、秘書経験があって、根性のありそうな人を選んだ」
「ふーん」

ペラペラとめくると、みなかなり年上だ。
過去にはバリバリと働いていたが結婚や出産でいったん退社した人や、未婚のキャリアウーマン管理職。みんな使いにくそうな人ばかり。

「他にいないのかよ」
「文句言うな。お前のせいだろうが」
「それにしたって、子育て中で時短勤務希望の社員や管理職として活躍している母さんほどの年齢の女性をどうやって使えっていうんだよ」
「仕方ないだろう。じゃあ、お前に誰か当てがあるのか?」
「それは・・・ああ、そうだ」

不意に、俺はいいことを思いついた。

「誰かいるのか?」
「ああ。語学堪能で、秘書経験もある」
「誰だ?」

身を乗り出してきた雄平に、俺は社員データから芽衣を見せた。

「あ、ああ」

ん?
知っているって反応。

「雄平、知り合いか?」
「いや、少し前に、ちょっとな」

何だよ、気になるじゃないか。

「お前こそ、何で彼女のことを?」
「たまたまな」
「ふーん。まあ、いいんじゃないか。根性ありそうだしな」

どうやら俺の知らない接点があるらしいが、後々聞けばいい。

「じゃあさっそく手配を頼む。断られないようにしっかり根回し頼むぞ」
「ああ、周りから固めてやる」

怖っ。やっぱり雄平は敵に回したくない。