「大丈夫?落ち着いた?」
「はい」

藍さんに抱えられてロビーに連れ出してもらった。
おかげで注目を浴びることもなく、会場を出ることができた。

「すみません、急にお酒が回ったらしくて」
「いいのよ。悪いのは轟課長だから」

藍さんはそう言ってくれるけれど、お酒が回って動けなくなったんじゃない。
本当は・・・

「副社長を見たとたんおかしくなるから、驚いちゃったわ」
「すみません」

藍さん、もしかして何か気づいたのかもしれない。

「噂通り素敵な人だったわね」
「え?」
「副社長よ」
「ああ」

あれだけ離れた場所から見てもキラキラと輝いているのがわかる、文字通り王子様だった。

副社長、平石奏多。
日本を代表する財閥の御曹司。
私とは何の接点もないはずの人なのに・・・

「芽衣ちゃん、顔色悪いわよ」
「大丈夫です」

この体調不良はお酒のせいではない。
原因は・・・あの人。