次に目が覚めたのは朝の4時。

まだベットの上で眠っている奏多さんを見ながら、幸せな気分になった。
もう二度と会うことのない人。
わかっていても、こうしていられたことがうれしい。
この思い出を胸に、新しい生活を始めよう。

私はそっとベットを抜け出すと、荷物をまとめた。
買ってもらったワンピースは記念にいただいて行こう。
もう着ることはないかもしれないけれど、奏多さんの元に置いておいても迷惑なだけだろうから。

『色々とありがとうございました。おかげでとっても楽しいシンガポール旅行になりました。今日帰国なので、黙って行きます。奏多さんもお元気で。芽衣』

部屋にあったメモ紙にメッセージを残し、私はホテルを後にした。