「仕事上付き合いのある現地の友人に誘われてね、断れないんだ」
「でも、どうして私を?」
「たまたま目の前にいたのが一番の理由」
「それだけ?」

「それだけじゃない」
奏多さんは言葉を止めた。

「奏多さんのことを何も知らず昨日出会ったばかりの私なら、あとくされなくていいかなって、思ってますか?」
私が思ったことをはっきりと口にしてみた。

「ずいぶん言葉が悪いな」
「そうですか?」

どんな言い方をしても結論は同じ。
これだけ見た目がよくてお金持ちの奏多さんなら近づいてくる女性も多いはず。
下手にパーティーなんか同伴すれば、必要以上に期待を持たせることになりかねない。
だからこそ、何の接点もない旅行客と関係を持ったんだろうと思う。

「どうかな?お礼に服でもバックでも好きなものをプレゼントするからさ」
「うぅーん」

シンガポールのセレブパーティー。
覗いてみたい気はするけれど、

「ねえ、頼むよ」
お願いと手を合わせる奏多さん。

「わかりましたから、やめてください」
「じゃあ」
「はい、お供します」

こうなったらとことんシンガポールを楽しもう。
いつものようにあまり先のことは考えず、私はパーティーへの参加を了承してしまった。