「俺はこの子の父親だ」
私のお腹にそっと手を乗せる奏多。

そうか、私はこの子からお父さんを奪うところだったんだ。

「妊娠を告げないなんてありえないだろう」
「ごめん」
「これからはずっと俺がそばにいるからな」

不思議。さっきからまったく悪阻がない。
今まで常に感じてきたムカムカもない。
やっぱり奏多に触れているからかな。

「もう、どこにも行くなよ」
「ぅん」

体って正直。
こうして側にいて、自分がどれだけ奏多のことが好きか思い知った。
いくら強情を張っても、奏多から離れることはできないと気づいてしまった。

「今度いなくなったら平石の総力を挙げて探し出す。もう遠慮はしないからな」
「はい」