「芽衣」

ん?
名前を呼ばれ、窓の外を眺めていた視線を戻した。

「久しぶりだな」
「うん」

そこにいたのは少し疲れた顔をした奏多。


奏多が席につき、2人で向き合って、訪れる沈黙。


「ご注文がお決まりですか?」
「俺はコーヒー」
「私はオレンジジュース」

私が注文するのを聞いて、奏多が不思議そうな顔をした。


「珍しいな」
「そお?」

普段酸味のあるものを好まない私がオレンジジュースを注文したことが不思議だったらしい。

「体調が悪いのか?」
「大丈夫」
「嘘つけ、顔色がよくないぞ」

それを言うなら奏多だって。
そう言い返そうと思ったけれど、言い合いになりそうでやめた。


飲み物が運ばれてくるまでの間、また沈黙が訪れる。

おかしいなあ。
言いたいことも、言わないといけないこともたくさんあるし、奏多だって言いたいことがあるはずなのに、言葉が続かない。

「お待たせしました」

飲み物が運ばれてきて、奏多と目が合った。